晴海三丁目

重野 誉敬


 晴海に行くには多くの人が有楽町あたりからバスに乗るものと思われます。これらのバスは起点が東京駅や新宿駅ですね。で、間違って新宿から「都03」系統に乗るとえらい時間がかかってダマされてしまうわけです。
 さて、銀座、築地を過ぎ、勝鬨橋を渡ってバスの終点もぼちぼち近づいてくると「次は晴海三丁目。無線従事者国家試験センタ一にお越しの方はこちらが便利です。」という案内放送が入り、バスは右に曲がります。正面には見本市会場が見えてきていよいよ臨戦態勢1が近づいて来る、じゃなくて来ていたわけですね。
 今回晴海にて「東京のりもの学会」が開催されるに当たり、主催者であるクサール開発事業団では記念誌「晴海の空の下で」を発行するからその構成員は「晴海」をネタに何か一本書くうにという依頼と言いますかお達しが来たわけです。「晴海」が絡んでいれば別に何でも良いようであったのですが、私は晴海時代の学会2は知りませんしどうせ他の人がホタにする事でしょう。で、何かネタは無いかなぁと無い頭の中を検索したところこの無線従事者国家試験センターがヒットしたという訳です。一応かっては「鉄である以上に無線家」であるという事を自称していましたし3、就職先も無線通信と非常に関わりの深い所であるので、今回はこのバスに乗る度に名前だけは聞かされるにも関わらずなんだかよく分からない物に関し書かせて頂こうと考えた次第であります。
 さて、近年、携帯電話、等の急激な普及に伴い、電波の利用が急激に増加してきています。しかしながら電波という物は有限の資源であるため、この使用には統制が必要です。皆が好き勝手に電波を出してしまったら、どこもかしこも妨害電波だらけで通信など不可能になってしまいます。日本では郵政省が電気通信の監督官庁であり、電波に関しても郵政省の監督下に置かれています。郵政省と聞くと郵便、貯金、簡易保険のいわゆる郵政三事業を連想するという方が多いものと思われますが、実は時代の最先端を行くハイテク官庁なのですね(^^;4 そういうわけで勝手に電波を出してはならないという事がお解り頂けたとは思うのですが、電波を出すためにはごくごく僅かな例外中の例外を除き「無線局免許状」が必要です。え、あなたが持っている携帯電話は電波を出すものだがそんなモノは無いと。それはあなたが持っていなくてもドコモやなどといったその携電のキャリアにはちゃんとあるのです。それに、端末の裏側にシールが貼られていないでしょうかあなたが勝手に貼ったプリクラではなくて、他のです。
 このようなシールが貼られていないでしょうか携電の場合にはこれが無線局免許状の代わりとなっています。
 さて、この無線局免許吠を取得するためにはこれまた僅かな例外を除いては「無線従事者」の資格を持った人が必要なのです。ここまで説明すればもうお分かりですね。以下略。というのは冗談で、この晴海三丁目にある「無線従事者国家試験センター」はその名の通りこの無線従事者の国家試験を行う場所なのです。財団法人日本無線協会が郵政省から委託を受けて試験を行なっています。無線従事者国家試験センター(以下国試センター)は晴海埠頭方面へ向かって右側、すなわちバスを降りて道を渡った側にある「江間忠(えまちゅうビル」にあります。この建物のにはこのほかに幾つかの会社が入っているようです。
 無線従事者の資格にはかなりの種類があり、出力や周波数等の操作範囲もピンキリです。かつてはここ晴海の国試センタ一で行われるのはアマチュア無線などのように易し目で、受験者が多いもののみであったのですが、現在は全ての無線従事者の国家試験がここで行われています。もちろん、ここだけで試験が行われているという訳ではなく、東京の試験会場が晴海にあるという意味です。
 ここで終わらせてしまっても良いのですが、「試験会場ってどんな様子なの?」と思われる方も多少はいるかもしれませんので、ごく簡単に会場の様子を説明します。が、なにぶん私がここで試験を受けたのは十年以上前であるので、かなりうろ覚えですし、現在は様子が変わってしまっているかもしれません。
 試験とは言っても所詮ただのぺ一バーテスト、それも今はその多くはマークシートですから、その会場も別に特別なものではありません。小中学校にあるような椅子と机が百組ほど並べられているだけです。あえて「無線従事者」の試験特有のものを挙げるとすれば、一番前にテープレコーダーがある事ぐらいです。「英検」を受けた事がある方なら記憶にあるかもしれませんが、一つだけあるスピーカーが非常に大きくて背面から操作するアレです。無線の試験では資格によっては「モールス」の試験があります。あのトンツーというやつですね5。このためにこのテープレコーダーが使用されるのです。
 以上、バスの放送で耳にする無線従事者国家試験センタ一に関しごく簡単ではありますが説明しました。次回バスに乗る時にはちょっとだけ晴海三丁目での放送に気を配って貰えれば幸いです。が、残念ながら国試センタ一の案内は晴海埠頭方面のみでしか入らないようです。おっしまい。

脚注

1:何の?

2:コミックマーケットのことをクサール開発事業団ではこのように呼びます。

3:現在はそうではないのですが。

4:そう思って頂けると非常に有り難いです。

5:無線の場合には「トンツー」という音ではなく「ピピー」という感じの音です。


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Published on 1998/03/29 / Last updated on 2004/12/30
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