鳴沢 唯(以下、唯)「詩織ちゃん遅いなぁ~.......今日から旅行の約束してるのに.....今度もまた『面白い駅があるから行こう!』って約束してるのに.......」
唯「.....あ、来た!向こうから走って.....あ、あれ?」
虹野 沙希(以下、虹野)「唯ちゃ~ん.......はぁ、はぁ、はぁ......お、お待たせ!」
唯「あれ?沙希ちゃんじゃない?....そんなに息切らして、大丈夫?」
虹野「はぁ、はぁ、ご~めんなさい。ちょっと、準備に、手間取っちゃって....」
唯「って、詩織ちゃんは?」
虹野「唯ちゃん、今回の旅行の行き先は?」
唯「えっと、えっとぉ.......九州だって聞いてるけど?」
虹野「んもぉ~....忘れちゃったの?今回の行き先は『虹野松原』よ!」
唯「『虹ノ松原』だってば........」
虹野「大丈夫。話し言葉なら区別つかないってば」
唯「そ、そう言う問題じゃ......」
虹野「そ~いう問題なの!さ、早く行かないと新幹線に遅れるよ!」
唯「あ~ん、待ってよぉ。」
虹野「さすが新幹線、早かったわねぇ。もう博多だわ。」
唯「でも、6時間もかかったの......で、まだ博多なんでしょ?」
虹野「ほらほら、これで音を上げるなんて、根性が足りないぞ!」
唯「う~ん、ネを上げたわけじゃないけど.........」
虹野「ここからは地下鉄よ。乗り換えて後1時間!」
唯「1時間か~.......よしっ!がんばろっと」
虹野「その意気その意気!さ、行こう!」
唯「うんっ!」
虹野「青森の方は、どんな感じだったの?」
唯「ん~っと、なんか家ばっかりのとこだったよ。青森だからリンゴ園とかあるかと思ったのに」
虹野「ふ~ん、ここは.....バスターミナルだって」
唯「バスでここまで来て、街中へは地下鉄で行ってくださいってことなのかなぁ?」
虹野「そういうことみたいね。バスターミナルへは地下鉄からそのまま出て行けるみたいだし」
唯「便利な駅ねぇ。でも......なんか私達の街にもありそうな感じ」
虹野「そうね。なんだか見慣れた風景よね。早く虹ノ松原に行こう!」
唯「沙希ちゃん....元気。」
虹野「さ、やっと着いたわ。虹ノ松原!あたしの駅!」
唯「へぇ.....すごい。駅を降りたらもう松林の中だ」
虹野「あそこに何か書いてあるわ。えっと.....防風林だって」
唯「ぼーふーりんって?」
虹野「防風林。海風が強いから、それを防ごうって目的の林ね」
唯「へぇ~、そんなにこの辺の風邪って強いんだぁ」
虹野「風邪じゃなくて、風よ、風」
唯「なんで喋ってるだけなのに違いが判るの?」
虹野「......防風林だから、海が近いはずよ。行ってみない?玄界灘!」
唯 (う....ごまかされた)
唯「なんか白い建物があるよ」
虹野「喫茶店....ドライブインかな?」
唯「でもなんか、お休みみたい。車は止まってるけど」
虹野「よいしょ.....っと。まだ時間が早いからね。あ、脇に細い道がある。ここから海に行けるかなぁ?」
唯「Happy Gateだって」
虹野「幸せの門かぁ~、くぐると幸せになれるかなぁ?」
唯「沙希ちゃんなら、きっとなれるよ!」
虹野「唯ちゃん......今、幸せ?」
唯「うん!お兄ちゃんと一緒でと~っても幸せ!」
唯「すっご~い。松の木がみんな曲がってるぅ。玄界灘の風って強いのね」
虹野「冬の日本海の風って、凄いらしいわよ」
唯「今日は、まだそんなに風強くないね」
虹野「でも、旅行が終わって、原稿書いて、本になった頃はきっと.....」
唯「その頃、また来てみよっか」
虹野「それも面白いわね。でも、夏も来てみたいな。泳ぎに」
唯「あ、それいいね。今度はみんなで泳ぎに来よう!沙希ちゃんの松原に」
虹野「や、やだぁ~、私のじゃないってばぁ」
虹野「さて.....そろそろ駅に戻ろうか」
唯「うん。来た道を戻って....松さん、風からみんなを守ってくれて、ありがとう」
虹野「それにしても凄く長い松林だったね」
唯「うん。右を見ても、左を見ても、松ばっかり」
虹野「そして駅も松の中.....、着いたわ」
唯「あれ?ここ、切符売り場がないよ」
虹野「ってことは....あ、駅前のお店で売ってるわ」
唯「あ、本当だ。おばさ~ん、博多まで。二枚」
虹野「博多までじゃなくて、福岡空港まで。さ、次の駅へ向かうわよ」
唯「え?もう帰るんじゃないの?」
虹野「まだまだ。旅行は根性よ!次は新潟へ飛ぶわ!」
唯「え~、九州だけだと思ってた。でも新潟だと、お魚とかおいしそうね」
虹野「さ、行くわよ」
唯「ねね、沙希ちゃん。なんかこの駅、JRの駅じゃ無いみたいだけど?」
虹野「うん。ここは新潟交通っていう私鉄の駅なの」
唯「へぇ~、あ、でもなんか車庫に東京でも見る電車が居る!」
虹野「あら、小田急の電車ね」
唯「なんでこんなとこに小田急の電車が走ってるの?」
虹野「う~ん、よくわかんないけど、要は小田急で要らなくなったのを買ったかもらったか、したんじゃないかしら?」
唯「ふ~ん、そうなんだ」
虹野「さて、切符買いましょ」
唯「ちょ、ちょっと待って。どこまで?」
虹野「ついこの間、出来たのよ。面白い駅が。すいませ~ん、ときめきまで二枚!」
唯「え!ときめきなんて言う駅があるの?」
虹野「そう。この間出来たばっかり。ほやほやの駅よ。さぁ、電車も来たし。乗りましょう!」
唯「うん。楽しみだなぁ、できたての駅なんだ」
唯「着~いた。ときめき!.....って、これだけ?」
虹野「そうみたいね。ホームがあるだけだわ」
唯「なんかこれも凄い駅ね~」
虹野「周りは......家が多いわね。」
唯「ちょっとあるいてみよう」
虹野「へぇ~、見てみて、唯ちゃん」
唯「なに?....家の広告?」
虹野「見て欲しいのは、広告じゃなくて住所よ。ほ~ら」
唯「あ、すごい。黒崎町だって。ゆかりちゃんの親戚と同じ名前だ」
虹野「新潟市黒崎町ときめき。出来過ぎなくらいの町の名前ね」
唯「高速道路の向こうは....田圃ばっかりね」
虹野「後はトラックセンターだわ。運送会社は....飛脚ってことは佐川急便ね」
唯「Footworkとかは?」
虹野「よくお世話になるとこだけど.....無いみたいだわ」
唯「なんか残念」
唯「沙希ちゃん、時間は?」
虹野「そろそろね。帰りましょうか」
唯「うん! あ、あれ? ここも切符の販売機無いよ。どこで買うの?」
虹野「さっき見てたんだけど、バスと同じみたい。みんな整理券取って、降りるときに払ってたわ」
唯「へぇ~、沙希ちゃん、よく見てたね」
虹野「そ、そんなことないよ。あ、電車来たわ。整理券取って....と」
唯「今回は、激しかったね。九州からトンボ返りで新潟だもん」
虹野「そうね。今度はもう少しゆっくりしましょう」
唯「お願いだよ。唯、疲れちゃった」
虹野「ごめんね。でも、ときめき駅がせっかく出来たんだし。どうしても来たくって」
唯「そ、そんな、謝らないでよ。唯、別に怒ってないから」
虹野「本当?よかったぁ~」
-End-
「原稿落とした」「アイリス悪くないもん」
「なぜ落とした」「アイリス悪くないもん」
「だから落とした」「アイリス悪くないもん」
......「アイリス悪くないもん」
既に隠居の斜怪塵 偽田中 秀(SHU)