あくまでも私見ですので、そのあたりはご承知おきいただければと思います。また、あえて具体的なサークル名、誌名は出しませんので、各自ご想像ください。
サークルの入れ替わりですが、概ね5年程度連続して参加、活動するサークルさんが多いようですが、中にはわずかですが、東京のりもの学会でも第1回から皆勤賞のサークルさんもおられます。
第5回以降のジャンル別配置について分析してみますと、毎回鉄道が約6割を占め、以下、旅行、バスの順となっていますが、旅行は増加傾向、バスは微減の傾向が見受けられます。模型等は8サークル程度でほぼ安定しており、民間航空、船舶については各回それぞれ3サークル以下、という状況です。
内容についてですが、インターネットの普及により、情報収集、発信がWebでかなり自在に出来るようになり、特に速報性を目的とした同人誌は発行しにくくなったのは間違いないようです。また、マイナーなテーマの同人誌も出しにくくなった可能性があるのですが、ここらへんの発刊する、しないの差は、個々のサークルの情報リテラシーの差に由来するかもしれません。逆にインターネットのオンライン情報のオフライン化、というサークルさんもいくらかおられます。
まず、参加者の年齢層についてですが、サークル参加者については出展参加申込様式(41ページ参照)には「年齢」の記入欄があるものの、この項目は書類不備の時に確認を行うなどといった目的で設けている欄であり、このため書面での申込分については出展参加申込データベース(34ページ参照)への入力を行っておらず、集計はできませんでした。オンライン申込についてはデータベースに入りますが、オンライン申込分だけの集計では意味が無いため掲載いたしません。
一般参加者についてはアンケート提出分に限られますが表1のような年齢層分布になっています。参考として「コミックマーケット30'sファイル」よりコミケットにおけるサークル代表者の年齢別分布を掲載しておきますが、これらを見比べる限り参加者の年齢層は比較的高いと言えそうです。
年齢層 | 年代別一般参加者数 | (参考)年代別コミケットサークル代表者数 |
---|---|---|
10代以下 | 0 | 1,659 |
10代 | 5 | |
20代 | 42 | 20,554 |
30代 | 47 | 13,311 |
40代 | 11 | 1,527 |
50代以上 | 1 |
一般参加者について第9回のアンケートで記入があったものについて数えると男性87、女性2という極端な男女比となっていますが、実際に会場内を見渡す限りではここまで極端な男女比ではないように見受けられ、また、サークル参加者については男女比は一般参加者に比べ男女比の偏りは少ないものと思われます。
参加者の居住地域についてですが、表2の通りとなっています。関東地方以外では特に愛知県と大阪府からの参加者が比較的多いようです。また、一般参加者に比べサークル参加者の方がより幅広い地域からの参加が見受けられ、地域的な偏りはやや少なくなっているようです。
第10回申込者数 | 第9回一般回答数 | |
---|---|---|
東京都23区 | 28 | 33 |
東京都市郡部 | 11 | 5 |
神奈川県 | 17 | 20 |
千葉県 | 8 | 12 |
埼玉県 | 16 | 9 |
茨城県 | 1 | 5 |
栃木県 | 1 | 1 |
群馬県 | 2 | 2 |
愛知県 | 7 | 5 |
大阪府 | 9 | 5 |
北海道 | 1 | |
東北 | 7 | |
甲信越 | 2 | 2 |
北陸 | 2 | |
東海(愛知県以外) | 8 | 1 |
近畿(大阪府以外) | 9 | 4 |
中国 | ||
四国 | ||
九州 | 1 | |
沖縄県 |
まず、このジャンルの主なところである「鉄道系」については、比較的大きな変化がありました。
このジャンルは元々、大学鉄研や趣味団体の研究誌を発祥とし、その流れ、あるいはモデルとしての研究本が数多く出されてきました。具体的には旧国鉄車の運用解析や、切符本ですが、このような本はこの10年あまり広がりをみせなくなってしまいました。先にあげたインターネットの普及も理由に挙げられるでしょうが、最大の理由は、この10年で猛烈な勢いで出版されるようになった商業誌によるものと思われます。商業誌がそれこそ重箱の隅をつつくようなネタまで出版するようになってしまい、同人誌の存在意義と新たな発行意欲を減退させてしまったと思われます。また、同時にこの手の本の重要な発行元であった「大学鉄研」そのものが、この10年で消滅といっていいほどに激減してしまった、という大事件も見逃せないかもしれません。
もう一つの大きな変化は、いわゆる「職鉄本」です。鉄道事業者の職員が趣味で自らの会社や職場の面白い話を紹介するというスタイルの「職鉄本」は、鉄道会社の内幕を知るという同人サークルでしか出来ないジャンルでしたが(鉄道に限らず、例えば医療関係などでも職場本は見受けられます)、2000年以降、いわゆる企業の「コンプアライアンス」「情報管理」の浸透により、発行自体が極めて困難になったようです。なかには発行したことで職自体が脅かされたケースも発生したようで、結果このような職鉄本は急速に消え、残っているサークルも、かなり厳しい情報管理を強いられているようです。ただ、これは自らの職場の話をするからいけないのであって、鉄道会社の職員さん自体のサークル活動が消えたわけではありません。逆に別の方向に~たとえばスルットちゃんとか~に昇華したケースもあります。
スルットちゃんはご存知のとおり、1996年に登場したスルットKANSAIのマスコットキャラですが、このマスコットキャラがかわいい女の子(魔女)であったことから、これを「萌え」の対象とする新たな創作活動が生まれました。しかも、これを契機にこのようなマスコットキャラが全国の交通事業者に波及発生し、それだけネタの対象が増えた、ということも見逃せないでしょう。この結果は、2005年から毎年3月に開催されているオンリー即売会「おでかけしよーよ!」に結実するまでになりました。スルットちゃんの場合、元がマスコットキャラの為、同人誌に「マンガ」「イラスト本」が多い、というのが最大の特徴となっています。
もう一つのテーマは「鉄娘擬人化」。元はミリタリー系の「メカ娘」が発祥と思われるのですが、これを鉄道車両に適用したインターネット上のイラストサイトがブームに火をつけました。鉄道車両の擬人化は遥か昔からあるのですが、これまでの擬人化が、「ヒトの体に電車(の先頭部)の頭」一般的だったのに対し、新たな鉄娘系の擬人化は、素体や顔はあくまでも人間(女の子)で、「鉄道車両の気ぐるみ(コスプレ)を着せた」という形になっているのが最大の特徴です。発行される同人誌も漫画よりも「イラスト本」が多いのもある意味必然といえるでしょうね。こちらも2005年9月以降の「鉄娘ファン」「鉄娘ジャーナル」というオンリー即売会に結実しています。ただ、擬人化の手法に各論があるらしいのと、そもそも鉄道系ではイラストレーター(つまり絵師ですね)が決定的に少ないという問題があり、サークル数が急速に拡大するまでには至っていないようです。
最後に、これは同人誌商業誌問わずにこの10年で安定しているテーマが「廃線跡」です。廃線跡の探訪記は旅行記にもしやすく、そこそこの数の同人誌、同人サークルが活動されていますが、これもまた商業ベースの書籍の充実がすさまじく、そのあおりを受けてしまっている感が否めません。
東京のりもの学会とは直接関係ありませんが、のりもの学会の開催に合わせ、非常に特徴的な~ラッピングやバス形式など~を都産貿まで貸しきる、なんてサークルさんもおられるようです。このようなバスツアーが出来るのも、バス系サークルの強みかもしれません。
商業誌のある民間航空はともかく、船舶については商業誌も見当たらない為か、同人誌でもむしろ旅行系に含まれている方が充実しているようです。
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旧ジャンルコード69(C59)鉄道・メカミリ:バス・モータースポーツ・おもちゃ・ガレキ・車・バイク | 現ジャンルコード609(C72) 鉄道・旅行・メカミリ:バイク・バス・車・モータースポーツ/おもちゃ・食玩/ガレキ・カメラ・無線機 |
旅行系といっても国内/海外、あるいは交通手段など、内容は非常に多岐にわたるため、傾向を述べることは難しいのですが、海外では「スポーツ観戦記のついで」の旅行記がちらほら見られるようになったほか、お茶や鉱石コレクションの関連としての旅行記もそれなりにあるようです。一方、国内旅行では、これまでの博物館、神社仏閣めぐり系に加え、「道の駅」「国道」が新たな対象として目に付くようになりました。どちらもツーリング系の趣味といえるのですが、道の駅や国道そのものが対象となるのはこれまでにないことで、趣味もここまで来たかという感があります。